鹿肉でむらづくりセミナーで『マーケティングの基本』を再確認

2011年6月30日、神田にある、『まちむら交流きこう』にて開催された、『獣肉を活用した地域づくり』セミナーに参加してきました。

獣肉(獣害)の有効活用について、有名な滋賀県の『松井 賢一』氏が講演されるということで、エゾシカの有効活用の参考になるのではないか?と考えて参加しました。

滋賀県の日野町のホンシュウジカが今回のセミナーの主役ですが、捕獲している頭数は日高のエゾシカに比べてずっと少ないです。日野町のホンシュウジカが一躍有名になったのは、2010年5月の、『ココイチでシカカレー発売』の事例ですね。また、都市圏(京都)に近い立地を生かして、レストランと取引を進めているようです。

ココイチのシカカレーの実現や、京都のレストランへの営業は、主に松井氏が仕掛け人です。農協から、県職員に転じた松井氏は、農協時代の営業経験を生かし、いかに日野町のホンシュウジカを売るかに様々な手を使っています。

現在、ニュージーランド産のアカシカに変わり、北海道産のエゾシカが市場を占めています。ホンシュウジカの流通はほとんどないといっても過言ではありません。もちろん、関東地方だけではなく、関西地方でもエゾシカは取引されています。したがって、日野町ホンシュウジカのライバルは、北海道のエゾシカになります。

エゾシカとホンシュウジカの違いですが、同様に適切な処理を行った場合、肉の味としての差は大きくないと思います。ただし、ブロック肉にした際の肉のサイズ、処理コスト、歩留まり、ハンターの腕、安定供給などのポイントにおいて、ホンシュウジカが不利だと思っています。日野町のホンシュウジカに関しても、エゾシカをライバルとした以上、同様に不利なポイントがあります。

自らの不利なところを認識した上で、強みを発見し、その強みで攻めるべきだ。というのが、氏の主張です。どのマーケティングの教科書にも載っていることであり、常識レベルのことではありますが、実行するのは口で言うほどにやさしくない『常識』です。

氏曰く、日野町のホンシュウジカの強みは、消費地との物理的な距離が小さいことだそうです。この強みを生かすためのひとつの戦術として紹介されていたのが、セルヴェル(脳みそ)の商品化です。頭蓋骨の中から取り出す技術、鮮度、強いニーズがあっても量はない・・・といった問題があり、なかなか商品化しにくい部位です。特にBSEの問題が発生してからというもの、羊などのセルヴェルはほぼ流通していませんので、セルヴェルを特別なゲスト向けに出すために、レストランと近く、鮮度が良いセルヴェルが手に入る、日野町のホンシュウジカを使う。という流れになるわけです。

(ただし、セルヴェルがとれるということは、着弾位置へのこだわりはあまりないのかも。。。血抜き処理から考えるとヘッドショットが良いと言われます。)

もちろん、この戦術だけでは、一部(マニアックな高級レストラン)の市場しか落とすことはできないと感じますが、おそらくその他にも日野町の立地を生かす戦術はあるのでしょう。

マーケティングの基本である、自分の強みを生かす。これを再認識したセミナーでした。

エゾシカは、ブランドイメージが既に高い(エゾって聞くだけで美味しいと思ってもらえる)、ハンターの腕が他の地域に比べ高い、年間通した安定供給などメリットがたくさんあります。もちろん、全道でエゾシカは獲れるので、日高のエゾシカにとっては、道内の他地域もライバルになります。日高のエゾシカの強みを再定義し、戦っていく必要があると感じたところです。

松井賢一氏

松井賢一氏

 

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