北海道庁の水産林務部が作ったすごろく

北海道庁の水産林務部が作った『すごろく』の一こまです。

子供向けの教材ですごろくのゴールは 『やっと、りっぱな森林になったね♪』 で、さらに、 『森林づくりにゴールはないんだよ。いつまでもくりかえしつづいていくのが森林作りなんだよ。』 のコメントに深いなぁ・・・と思います。

そんな素敵なすごろくですが、その中の一こまにエゾシカが出てきているので転載します。

エゾシカにくわれる
(北海道水産林務部総務課林務企画グループ 森林すごろくより)

農業被害が一般に言われていますが、森林作りにもエゾシカはやっかいな生き物です。

植えた苗木を根こそぎ食べたり、樹木の皮を剥いで木を枯らしてしまったり。

農業被害のように、金額で出しにくいのであまり知られていないのですが、森林作りにもエゾシカは問題で、それをこんな素敵なすごろくで教えてくれる。

官庁というと、堅くて分かりにくい資料ばっかりと思われがちですが、素敵な教材もありますね。

 
posted by ひでだんぼ at 2012年3月21日 (水)18:14 (カテゴリー 10_エゾシカの勉強

エゾシカの熟成肉とフレッシュ肉の違い

美味しいかどうかというのは、人それぞれの感覚なんですが、エゾシカの熟成肉とフレッシュ肉をお客様を巻き込んで食べ比べするのは、(たぶん世界初の・・・)エゾシカ専門店、エゾシカフェならでは。

エゾシカフェでメインに使っている肉や、クイージ(YUK.JP)で販売しているエゾシカ肉は日高産の『エゾシカ熟成肉』です。
(たまには、フレッシュなエゾシカ肉も取り扱いますが・・・)

自分の舌だけではなく、エゾシカフェのお客様にもを食べ比べていただき、エゾシカ肉の卸販売までしているので、両者の違いはなんとなく整理されてきました。

■エゾシカ熟成肉(ドライエイジング)
肉の味がフレッシュに比べて濃くなる。特にチーズっぽい味わいになる。
もともとは水分が多いエゾシカ肉ですが、熟成工程で程よく抜けてくれるので、熱の通し方がフレッシュ肉より、シビアではない(実は料理が簡単)。
タンパク質が分解してアミノ酸に変わるので、フレッシュに比べて肉が柔らかくなる。
熟成に手間隙がかかる(約3週間、温度と湿度をコントロールした熟成庫に入れておく必要がある)。
1割ほどの水分が抜けるので、歩留まりが悪くなる。
全体的に酸化するので、色が悪くなる(味には関係ないが・・・)

※歩留まり 1頭のエゾシカから取れる肉の量

■エゾシカフレッシュ肉
パンチのある血(鉄分)の香りが印象的。この香りがエゾシカらしいというお客様も多い。
肉の味わいはマイルドであっさりと食べることができる。
脂の酸化が少ないので、熟成肉にある脂のいやな臭いがない。
下手な冷凍をかけてしまうと、大量のドリップが出てしまう(旨みが・・・)。
きっちりとした冷凍をかけ、丁寧な解凍を行わないと肉がパサパサになる。

エゾシカ熟成肉
エゾシカ熟成肉のうちモモです。
色はきれいなピンク・・・ではないですが、味はいいですよ。

時と場合(食べる人、料理など)に応じて、両者の使い分けができたら、エゾシカマスターですね。

 
posted by ひでだんぼ at 2012年3月6日 (火)19:44 (カテゴリー 10_エゾシカの勉強 / 11_エゾシカフェ

獣が山から下りてきた本当の理由

前回のブログで、『山が荒れたから、獣が里に下りてきた』は間違いで、『里が変わったから、獣が山から下りてきた』 と書きました。

人間が里山の管理ができなくなったため、里山の機能の一つである『人間と野生動物の緩衝帯』も機能しなくなり、獣が里に入りたい放題。。。となったわけですね。

ところが、里山の管理ができなくなるのと、山から獣が下りてくるのは同じ時期に起きたわけではありません。

最も重要な里山の機能に薪炭材生産がありますが、日本国内で需要のあるエネルギーが薪炭材から石炭石油ガスといったエネルギーに変わったことで、薪炭材生産はほとんどの地域で行われなくなっています。

これは、1900年ごろの話です。一方、山から獣が下りてきたのは、1980年頃から。80年ものタイムラグがあるわけです。

いったいこれはなぜでしょう?

結論は実は簡単で、山が豊かになり、山の獣が増え、山のキャパシティーを超え始めたのが1980年代だったからです。

日本の森は、昔からとても豊かだった。。。と考えている方は多いと思いますが、里に近い山はかなり荒れてたんですよね。

昔の画家が書いた京都近郊の絵です。木がちょっとしか生えてません。

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『華洛一覧図』 作画:横山華山

江戸時代の江戸や大阪といった大都市のエネルギー源としての森林や、明治に入った後の国内人口の急拡大や、昭和の戦後復興などで木材需要が高くなったことなどで、森林はどんどん切られていきました。

同時に、野生動物の生息環境も悪化し、生息数が激減したのが、この時代です。

ついでに、明治時代には、外貨獲得のためにシカ皮や肉を大量に輸出していたということもあります。

その後、幸か不幸か国産の木材需要が低くなり、森林に手を入れることがあまりなくなった近年、日本の森林は急速に回復し、同時に野生動物の数も急拡大した・・・というわけです。

さて、まとめると
『山が荒れたから、獣が里に下りてきた』は間違いで、
『山が豊かになって、獣が増えた。さらに、里が変わって、獣を防ぐ能力が弱くなっている。だから、獣が里に下りてきた。』
これが、正解であると考えています。

 
posted by ひでだんぼ at 2012年1月24日 (火)10:26 (カテゴリー 10_エゾシカの勉強

良くある『間違い』 → 山が荒れたから、獣が里に下りてきた

なぜ、鳥獣被害が発生するのか?という理由を聞かれることが多いです。

もちろん、それぞれの場所や、獣害を引き起こす野生動物の種類によって理由は様々です。

ただし、タイトルにあるような、『山が荒れたから、獣が里に下りてきた』という話は、かなり間違った認識だと思います。さらに深刻なのは、この認識を持っている方が、環境ジャーナリスト、環境保護団体、学識者や役人さんにもいらっしゃる、、、という現状です。

さすがに、個別には指摘しませんが、日経○○とか、某市町村のWebなどに、堂々と誤った認識が書いてあってびっくりすることもあります(昔と今の山の写真を比較したり、山の中少し歩けば分かると思うんですが・・・)。

『山が荒れる→獣が里に下りてきた』

そもそも、このロジックはショートカットしすぎで、現在の獣の数、山で生きることができる獣の数、里の状態、などなどの要因をすっ飛ばした話です。

なんとなく、それっぽく聞こえるので、言葉だけが独り歩きしたんだと思います。

 

山が荒れる とは?
まず、『山が荒れる』とは、いったいどういう状態の変化を示しているのでしょうか?『山が荒れる』、そのものが抽象的な言葉なので、人によって想像することが違うと思いますが・・・

1.大面積の皆伐などで、まったく木が生えていない状態が長く続いている。

2.手入れがされていない針葉樹の人工林で、ひょろひょろのスギやヒノキが密生していて、下草などが無い状態。

3.数十年前までは、里山利用(薪炭材利用)をされていたが、現在は放置されて、様々な樹種が入り込んでいる。

こんなところでしょうか?

現代日本では、1.はほとんどありません(皆伐はあります。その後ずっと放置というのがない。)ので、おそらく、2や3のことを言っているんだろうな。と思っています。

※皆伐 ・・・ 木をすべて切る伐採方法。最も経済効率的な施業とされる。伐採跡地には新しく木を植えて、育てる。で、育ったらまた皆伐します。まるで農業みたいな林業ですね。

※薪炭材 ・・・ 薪(マキ)炭を生産するための材、昔の人にとって最も身近なエネルギー源。石炭とか石油、ましてや電気なんて無い時代ですから。

2.に関しては、もしひょろひょろの木ばっかりの状況では、そもそも野生動物が生きていけません。増えません。里に下りてきた野生動物はどこで生まれて増えてきたのか??説明がつきません。
(1も同じですね。野生動物が生息できない環境だったら、里に下りるほどの獣はいません。)

で、3.ですが、これは正解です。里山は、里に住む人々により管理され利用されていました。利用しやすいように道が作られ、適度に伐採(収穫)と育成を行っていた山です。里と山の間にあり、人間が管理していた里山は、人間と野生動物の緩衝帯だった。という言い方もできると思います。

現代では、薪炭をエネルギーとして使うことはほぼありえません。こじゃれた炭火焼居酒屋か、豪邸にある暖炉ぐらいでしょうか?ですので、薪炭材をとるための里山は放置されてしまっているわけです。

ストーブ 
これは薪ストーブ(ペレットも使える)、都会じゃ立派な豪邸でないと設置不能です。

 

放置されると、草や木が生えてきます。こうなると、里山の緩衝帯としての機能はなくなってしまい、逆に野生動物にとって、いい隠れ家になってしまい、里に下りやすくなるわけです。

さて、『山が荒れたから、獣が里に下りてきた』についてですが、唯一の正解は、『里山』が荒れたから、ですね。皆さんの『山が荒れた』のイメージとはだいぶんと違うのではないでしょうか?

これじゃ、『里が変わったから、獣が山から下りてきた』 ではないでしょうか?山が荒れたのではなく、里が弱くなってしまったから獣が山から下りやすくなったが、正解ですね。

でも、『獣が山から下りてきた』 理由は、これだけではないです。次回、その理由について書いてみたいと思います。

 
posted by ひでだんぼ at 2011年12月15日 (木)17:49 (カテゴリー 10_エゾシカの勉強

北海道の川(新冠川)

小さいときから、川の近くに住んでいたので、やっぱり川が好きでボーっと眺めてしまいます。

北海道に住んでいたときは気がつかなかったのですが、北海道の川の特徴は、平地にある川も自然に近い状態なんですね。

この写真の川は、北海道新冠郡新冠町を流れる新冠川です。河口から15kmといったところです。下流にはサラブレッド銀座があります。

堤防があるわけでもなく、河川敷が広場になっているわけでもなく、増水すれば流れてしまう木が生えています。

都市域では、しっかり護岸工事されていて、自然に近い川はかなり上流に行かないと見れません。上流だと岩がゴロゴロしてて、この写真のような雰囲気ではないですね。

北海道に来ると、住んでいるときは気がつかなかった、『違い』を見つけて懐かしい気持ちになるのですが、川も違うんですよね。

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posted by ひでだんぼ at 2011年11月21日 (月)18:47 (カテゴリー 70_日々のこと

シカ肉は安全なのか?

日本で一般的に食べることができる肉は、牛・豚・鶏の肉です。たまに、食中毒の事故・事件や産地偽装などがあり、安全性を疑問視されることはありますが、通常は『大丈夫』と思って食べていると思います。

一方、シカ肉に関しては、野生動物ということもあり肉の安全性に疑問をもたれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

たとえば、2003年に兵庫県での事故 『E型肝炎ウイルスで、シカを食べた人が死亡』なんていう記事がセンセーショナルに報道されたことから、やっぱり、シカ肉は怖い!なんていうイメージを持っている方もいらっしゃるでしょう。

先日、東京都奥多摩町にて開催された『利活用セミナー』にて、兵庫県立大学の横山先生がお話していた内容は、シカ肉だからといって、特別にリスクが高いわけではないということでした。

データ

生き物別E型肝炎抗体の保有率

生き物

データ

E型肝炎抗体保有率(%)

シカ

H19-H21(109頭) 0.9%(1頭)

イノシシ

H19-H21(58頭) 17.2%(10頭)

ブタ(参考)

(引用 Takahashi,2008) 85.0%

(2011/10/12日 肉等活用技術研修会 横山氏発表資料より)

 

病気の専門家でもないので、そもそも抗体ってなんだ??という方も多いと思います。
簡単に説明すると、抗体とは、悪いヤツ(抗原)をやっつける正義の味方で、生き物自身が作り出します。

抗原・・・ウイルスそのもの。こいつが、悪さをする。
抗体・・・ウイルスをやっつけるための物質。体の中でウイルスに対抗するために作られる。

と理解していれば、大体OKです。一度、抗体が作られると、それは一生カラダの中に残ります。つまり、抗体があるというのは、昔に、E型肝炎ウイルスに感染したことがあるという証拠になるわけです。

 

つまり、シカはブタに比べると、E型肝炎を恐れる必要性は低いということです。昔からブタ肉はしっかり熱を通して食べよう!と言われていますが、シカに関しても同様にしっかり熱を通していればE型肝炎に関しては心配する必要はありません。

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ただし、牛や豚などと同様に、シカの消化器には大腸菌などの細菌類がほぼかならずいます。つまり、安心・安全な肉を食べるためには、ちゃんと衛生的に管理された処理場で適切に処理されたシカ肉を手に入れて、しっかり熱を通す必要があるということです。

ハンターが、野外で解体したお肉の全てが駄目というわけではないですが、レストランで出すのは食品衛生法違反ですし、個人的に食べるのも自己責任の世界です。

(東京都内でシカ肉を出しているレストランのうち、約半数がハンターから直接仕入れているという調査結果もあります。)

ハンターが自分で保健所認可の処理場を作り、解体・処理を適切に行っている可能性もありますが、そうではない可能性もあります。

まだまだ、一般的ではないシカ肉は、牛・豚・鶏のように、法律でしっかり取り決めがあるわけではなく、味も安心、安全も玉石混交になってしまっているのが現状です。今後、品質のしっかりした安心安全な肉だけが流通されるように、努力していきますが、現段階では、『信頼できる取引先から仕入れた肉を、信頼できる料理人が調理して食べる』を皆様にお願いしたいと思っています。

 

あと、CWD(シカの狂牛病)なんかも、北 米で確認されたことから、一部の地域の処理場で検査していたりします。まだ日本で確認されていなくて、人畜共通感染症になるかどうかも分からないものに対して、コストをかけて調査する意味はないと思います。もし、お金をかけて調査するのであれば、かならず汚染されていて、丁寧な処理でリスクを減らすことができる細菌類(大腸菌)の調査を行うことをお勧めします。

 
posted by ひでだんぼ at 2011年11月14日 (月)15:18 (カテゴリー 10_エゾシカの勉強

エゾシカチューシャ 増殖中・・・

なにげなくニュースを見ていたら、(Googleニュースでエゾシカをキーワードにしてます。)エゾシカフェの企画、『奈良で有名なアイツコンテスト』っぽいのがありました。

ぱくられた!

シカたがないです!!

食べることは楽しいこと、楽しいことはシェアしましょう!!

エゾシカフェでは、お客様に『エゾシカチューシャ』を装着していただき、それで写真をとってエゾシカファンクラブにアップさせていただいております。
いろんな、エゾシカチューシャがあるので、お気に入りのをつけて写真を撮らせて下さい!

エゾシカ肉の消費拡大をPRしようと、北海道内各地を回っている「エゾシカ肉ひろめ隊」

ニュース全部を見る

ちなみに、エゾシカフェで撮った写真は、こんな感じ!

 
posted by ひでだんぼ at 2011年11月9日 (水)20:22 (カテゴリー 11_エゾシカフェ

ラムカーナ(四谷三丁目)でエゾシカ生ハム

ラムカーナは、『たっぷり野菜とチーズフォンデュの店』です。でも、、、エゾシカの生ハムをオーダーできます。

ラムカーナシェフの中村さんに素敵なソースを作ってもらいました。
刻んだ生のエシャロットとバルサミコのソースです。エシャロットは比較的硬くて、エゾシカの生ハムは柔らかい。なんとなく食感が合わないような気がしたのですが、食べたらびっくり。硬さがいいアクセントになって、より生ハムが柔らかく感じます。バルサミコも、香りが高いので、エシャロットの香りも、生ハム(桜で冷燻してます)の香りがケンカするかと思いきや、それぞれちゃんと引き立って、素晴らしい組み合わせでした。勉強になります。

四谷三丁目とアクセスも良いので、ぜひエゾシカ生ハムをオーダーしてみてください!

店名    たっぷり野菜とチーズフォンデュの店 ラムカーナ 四谷三丁目店
住所    〒160-0007 東京都新宿区荒木町3-10 第3ハルシオン2F
アクセス     地下鉄丸ノ内線四谷三丁目駅 徒歩3分
TEL    03-6457-4942

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エゾシカの生ハム エシャロットとバルサミコノソース
おいしかったです!!

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もちろん、チーズフォンデュも、野菜もおいしいです。
前菜三種盛り合わせ

 

ラムカーナ 
ラムカーナの中村シェフ イケメンです!
同じ系統の食材を使って料理を作るのは結構簡単なんですが、
エシャロットとバルサミコと生ハムなんて、バラバラの香り、食感、味を組み合わせるのは、シェフの腕がいいってことです。

 
posted by ひでだんぼ at 2011年11月9日 (水)19:23 (カテゴリー 08_エゾシカが食べれるお店のご紹介

札幌が動物園に・・・

先日、札幌市内にヒグマが出没した!ということで、イベント中止、公園閉鎖、集団下校など様々な影響があったわけですが、札幌はヒグマだけではありません。キタキツネは、もう10年以上前から市街地でたまに見かけますし、最近はエゾシカの出没回数もすごいです。

10年前では札幌中心部でエゾシカが出没するのは、珍しいことで大きく報道されたのですが、今はとても頻繁に出没するようになってしまい、ニュースバリューが小さくなっただけです。

市街地にエゾシカやヒグマなどの大型の野生動物がでると、車や人との衝突や、襲われ怪我をするといった危険性が大きいです。また、市街地に出た野生動物の対処も非常に難しいです。大きく3つの対処方法があります。

対処方法

1.山まで追って帰す

数キロ先の山まで追えば、たしかによさそうですね。ただし、大型野生動物はとても足が速いです。実際に市街地に出たシカを追っている現場に同行したことがあるのですが、方向を決めるなんてまず無理です。びっくりした野生動物は興奮して追っている人に向かってくることすらあります。
ましてや、数キロ先の山までの間に、道路があり、車も人もいます。一般市民との衝突事故などの危険性も高いですね。

2.麻酔銃で眠らせて山まで帰す

手術の際に、麻酔薬を入れると、あっという間に人間は眠ります。さすがに、手で注射するわけにはいかないので、麻酔薬の入った吹き矢で眠らせようという考え方ですね。ところが、人間に追われて興奮状態の野生動物に麻酔がなかなか効かないわけです。手術の前にも、看護師さんから『はい。リラーックス。』って言われますよね。平静状態ではなく、体重も良くわからない野生動物に必要な麻酔の量なんて中々わかりません。さらに、この吹き矢・・・とんで10mです。そこまでは近づかなければいけません。もし、10mの距離で大型野生動物が自分の方に向かってきたら。残された猶予時間は約1秒、、、、危険ですね。

3.銃で殺してしまう

作業者はもっとも安全かもしれません。が、市街地でライフル銃をぶっ飛ばすなんて、これまた危険ですし、そもそも違法であることも多いです。撃ってもよい場所まで誘導して、銃で捕殺する・・・やれるものならやってみろ、ですね。最近では動物愛護関係の方々の批判も強いので、できればとりたくない方法でもあります。

 

北海道には自然がいっぱい、生き物いっぱい。確かに、それはすばらしいことです。しかし、都市で生活しているところに、野生動物が出てくるというのは、現代社会では想定外の事態です。出てきた野生動物を許容できない社会では、上記3つの対処方法も危険性が高いです。つまり、都市社会に野生動物が出てこないようにしなければ、安心できる生活はないわけです。

なぜ、野生動物が山から出てきたのか?
それを食い止めるためにはどうすればいいのか?

なんてことを、みんなが勉強して、根本的な対策(森から出てこないようにする。。。)にみんなで協力しないと、本当に札幌が動物園になってしまいますね。

 
posted by ひでだんぼ at 2011年10月31日 (月)14:18 (カテゴリー 10_エゾシカの勉強

野生動物管理(ワイルドライフマネージメント)の担い手

日本各地で増えているニホンジカやイノシシといった野生動物を適正な数にするためには、人間が積極的に減らすという行為を実行する必要があります。

現在でも、様々な施策が実行されていますが、あまり効果が上がっている地域は少ないです。

ここでは、先日の実務者のための利活用セミナーでエゾシカ協会の井田氏が講演された内容を元に、野生動物管理(ワイルドライフマネージメント)の実行者を整理して、それぞれ取られている施策について考えてみます。

ちなみに、現在日本でとられている施策は、下記表の狩猟と駆除の2つがメインです。
(追記)個体数調整と駆除の違いが良く分からなかったので、調べてみました。以降、ちょっと修正しています。

  具体例 期間 モチベーションアップ
狩猟
(趣味、スポーツ)
一般のハンターが、猟期に狩りを行う 狩猟期 狩猟期の拡大
銃刀法、狩猟法の規制緩和
駆除
(被害対策)
奨励金制度 狩猟期、狩猟期外など様々 捕獲時奨励金の拡大
捕獲後解体処理外注
登録ハンターの増加
個体数調整
(環境政策)

猟友会と自治体の年間契約

期間は様々 契約金の増加

狩猟

趣味、スポーツです。もちろん、 狩猟とは趣味の世界ですので、すべてのハンターはホビーから始まるといっても過言ではないです。

今年、北海道の狩猟期(エゾシカ)は11月から3月まででしたが、2011年度の狩猟期は、10月からと、約1ヶ月早くなりました。これは、一般ハンターの狩猟によって、エゾシカの生息数を減らそうという目的があります。

しかし、高い技術を持った一般ハンターも多数いるのですが、すべての一般ハンターが高い技術力を持っているわけでもありません。特に北海道はハンティングが他の地域に比べて容易であることから他県から多くのハンターもやってきます。そもそも、11月から狩猟期が始まるのは意味がありました。たとえば、落葉ですね。落葉することで、森林内の見通しが高くなり、動物の発見効率が上がったり、誤射の可能性が低くなります。

この記事を書いている時点でも、誤射のニュースがかなり出ています。一般ハンターに野生動物の個体数削減を期待するのは、少し無理があるのではないでしょうか?

駆除の拡大

現在取られている施策の中心はこの駆除になります。農林水産業に対して影響を与える野生動物(=個体)を積極的に捕獲するものです。駆除は、大きく2つあります。

■奨励金制度

一頭捕獲したら、ハンターに直接奨励金を支払うというものです。金額も地域によって様々ですし、写真でOKな地域や、尻尾などの証拠を持ってくる必要があったりします。年間契約型の駆除個体数調整は、公的な側面が強く、地域自治体から依頼されて実行するものですが、この奨励金制度は、ハンターのお小遣い稼ぎに近い考え方です。とはいえ、成功報酬なので、奨励金を上げることで捕獲数を一気に拡大した地域もあります。

個体数調整

駆除は、『農林水産物に悪影響を与える野生動物(=個体)を駆除する』という考え方ですが、個体数調整は、『人間によって環境をコントロールする』という考え方です。特定のエリアにふさわしい自然環境になるように、野生動物の数をコントロールします。

現状では、個体数調整を実現する具体的な方法が少ないためか、駆除と混同されることが多いです(当方も混乱)。

■年間契約型

年間契約で、狩猟者団体に依頼を行います。かなりの金額が狩猟者団体に流れています。実際のところは、日本には組織的なハンター集団は、猟友会以外にはほぼないので、地域の猟友会に依頼することになります。

効果は地域によって様々で、効果が上がっているとする地域や不満を持っている地域さまざまです。契約内容もかなり違うので、一概に費用対効果を出すのも難しいですが、契約にて捕獲頭数を担保していなかったり、使用する銃器の種類が決められていなかったり(肉を有効活用する際に問題)します。

とても少ない事例ですが、最近では、企業やNPOがハンター集団を持ち、効率的なハンティングを行っている事例も少しづつできていますが。。。

地域の生き物を長期的・永続的に保護するための生息数の調整として捕獲する。ちょっと分かりにくいですが、目的が、駆除に比べて広く、農林水産業に対する被害削減だけではなく、どれくらいの生き物がそこにいることがふさわしいのか?という科学的な知見に基づいて、増えすぎた生き物の数を調整しようという考え方です。

 

駆除と個体数調整が混同するのは、1.個体数調整の実現手段の一つに、駆除もあることと、2.野生動物の移動距離が長く、個体数が爆発的に増えているので、悪影響を起こす個体とそうではない個体の区別がつかず、どの個体を捕獲しても『駆除』とみなしているからですね。

いつか、個体数調整の実力を持った、野生動物の専門家でありハンターでもある専門家集団を作りたいです。

 
posted by ひでだんぼ at 2011年10月20日 (木)16:23 (カテゴリー 10_エゾシカの勉強