シカ肉は安全なのか?

日本で一般的に食べることができる肉は、牛・豚・鶏の肉です。たまに、食中毒の事故・事件や産地偽装などがあり、安全性を疑問視されることはありますが、通常は『大丈夫』と思って食べていると思います。

一方、シカ肉に関しては、野生動物ということもあり肉の安全性に疑問をもたれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

たとえば、2003年に兵庫県での事故 『E型肝炎ウイルスで、シカを食べた人が死亡』なんていう記事がセンセーショナルに報道されたことから、やっぱり、シカ肉は怖い!なんていうイメージを持っている方もいらっしゃるでしょう。

先日、東京都奥多摩町にて開催された『利活用セミナー』にて、兵庫県立大学の横山先生がお話していた内容は、シカ肉だからといって、特別にリスクが高いわけではないということでした。

データ

生き物別E型肝炎抗体の保有率

生き物

データ

E型肝炎抗体保有率(%)

シカ

H19-H21(109頭) 0.9%(1頭)

イノシシ

H19-H21(58頭) 17.2%(10頭)

ブタ(参考)

(引用 Takahashi,2008) 85.0%

(2011/10/12日 肉等活用技術研修会 横山氏発表資料より)

 

病気の専門家でもないので、そもそも抗体ってなんだ??という方も多いと思います。
簡単に説明すると、抗体とは、悪いヤツ(抗原)をやっつける正義の味方で、生き物自身が作り出します。

抗原・・・ウイルスそのもの。こいつが、悪さをする。
抗体・・・ウイルスをやっつけるための物質。体の中でウイルスに対抗するために作られる。

と理解していれば、大体OKです。一度、抗体が作られると、それは一生カラダの中に残ります。つまり、抗体があるというのは、昔に、E型肝炎ウイルスに感染したことがあるという証拠になるわけです。

 

つまり、シカはブタに比べると、E型肝炎を恐れる必要性は低いということです。昔からブタ肉はしっかり熱を通して食べよう!と言われていますが、シカに関しても同様にしっかり熱を通していればE型肝炎に関しては心配する必要はありません。

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ただし、牛や豚などと同様に、シカの消化器には大腸菌などの細菌類がほぼかならずいます。つまり、安心・安全な肉を食べるためには、ちゃんと衛生的に管理された処理場で適切に処理されたシカ肉を手に入れて、しっかり熱を通す必要があるということです。

ハンターが、野外で解体したお肉の全てが駄目というわけではないですが、レストランで出すのは食品衛生法違反ですし、個人的に食べるのも自己責任の世界です。

(東京都内でシカ肉を出しているレストランのうち、約半数がハンターから直接仕入れているという調査結果もあります。)

ハンターが自分で保健所認可の処理場を作り、解体・処理を適切に行っている可能性もありますが、そうではない可能性もあります。

まだまだ、一般的ではないシカ肉は、牛・豚・鶏のように、法律でしっかり取り決めがあるわけではなく、味も安心、安全も玉石混交になってしまっているのが現状です。今後、品質のしっかりした安心安全な肉だけが流通されるように、努力していきますが、現段階では、『信頼できる取引先から仕入れた肉を、信頼できる料理人が調理して食べる』を皆様にお願いしたいと思っています。

 

あと、CWD(シカの狂牛病)なんかも、北 米で確認されたことから、一部の地域の処理場で検査していたりします。まだ日本で確認されていなくて、人畜共通感染症になるかどうかも分からないものに対して、コストをかけて調査する意味はないと思います。もし、お金をかけて調査するのであれば、かならず汚染されていて、丁寧な処理でリスクを減らすことができる細菌類(大腸菌)の調査を行うことをお勧めします。

 

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  • [...] E型肝炎について記載しています。 [...]

     
     
     
  • なつめ

    アメリカ在中の日本人です。友人が毎年この季節に鹿を撃ちに行きます。彼は撃った鹿を自分で解体し、精肉所でひき肉やソーセージ
    ステーキなどにして私にも分けてくれるのですが、脂肪分が少なく
    美味しく頂いています。安全性について、彼曰く、鹿肉を食して 人間がCWDに感染した事例は過去には無いが、どんな肉も100%安全だと保証出来るものは無い。火を良く通すことが大切とのことでした。まぁ、添加物のごっちゃり入った加工品よりは安全かもしれませんね。