野生動物管理(ワイルドライフマネージメント)の担い手
日本各地で増えているニホンジカやイノシシといった野生動物を適正な数にするためには、人間が積極的に減らすという行為を実行する必要があります。
現在でも、様々な施策が実行されていますが、あまり効果が上がっている地域は少ないです。
ここでは、先日の実務者のための利活用セミナーでエゾシカ協会の井田氏が講演された内容を元に、野生動物管理(ワイルドライフマネージメント)の実行者を整理して、それぞれ取られている施策について考えてみます。
ちなみに、現在日本でとられている施策は、下記表の狩猟と駆除の2つがメインです。
(追記)個体数調整と駆除の違いが良く分からなかったので、調べてみました。以降、ちょっと修正しています。
具体例 | 期間 | モチベーションアップ | |
狩猟 (趣味、スポーツ) |
一般のハンターが、猟期に狩りを行う | 狩猟期 | 狩猟期の拡大 銃刀法、狩猟法の規制緩和 |
駆除 (被害対策) |
奨励金制度 | 狩猟期、狩猟期外など様々 | 捕獲時奨励金の拡大 捕獲後解体処理外注 登録ハンターの増加 |
個体数調整 (環境政策) |
猟友会と自治体の年間契約 |
期間は様々 | 契約金の増加 |
狩猟
趣味、スポーツです。もちろん、 狩猟とは趣味の世界ですので、すべてのハンターはホビーから始まるといっても過言ではないです。
今年、北海道の狩猟期(エゾシカ)は11月から3月まででしたが、2011年度の狩猟期は、10月からと、約1ヶ月早くなりました。これは、一般ハンターの狩猟によって、エゾシカの生息数を減らそうという目的があります。
しかし、高い技術を持った一般ハンターも多数いるのですが、すべての一般ハンターが高い技術力を持っているわけでもありません。特に北海道はハンティングが他の地域に比べて容易であることから他県から多くのハンターもやってきます。そもそも、11月から狩猟期が始まるのは意味がありました。たとえば、落葉ですね。落葉することで、森林内の見通しが高くなり、動物の発見効率が上がったり、誤射の可能性が低くなります。
この記事を書いている時点でも、誤射のニュースがかなり出ています。一般ハンターに野生動物の個体数削減を期待するのは、少し無理があるのではないでしょうか?
駆除の拡大
現在取られている施策の中心はこの駆除になります。農林水産業に対して影響を与える野生動物(=個体)を積極的に捕獲するものです。駆除は、大きく2つあります。
■奨励金制度
一頭捕獲したら、ハンターに直接奨励金を支払うというものです。金額も地域によって様々ですし、写真でOKな地域や、尻尾などの証拠を持ってくる必要があったりします。年間契約型の駆除個体数調整は、公的な側面が強く、地域自治体から依頼されて実行するものですが、この奨励金制度は、ハンターのお小遣い稼ぎに近い考え方です。とはいえ、成功報酬なので、奨励金を上げることで捕獲数を一気に拡大した地域もあります。
個体数調整
駆除は、『農林水産物に悪影響を与える野生動物(=個体)を駆除する』という考え方ですが、個体数調整は、『人間によって環境をコントロールする』という考え方です。特定のエリアにふさわしい自然環境になるように、野生動物の数をコントロールします。
現状では、個体数調整を実現する具体的な方法が少ないためか、駆除と混同されることが多いです(当方も混乱)。
■年間契約型
年間契約で、狩猟者団体に依頼を行います。かなりの金額が狩猟者団体に流れています。実際のところは、日本には組織的なハンター集団は、猟友会以外にはほぼないので、地域の猟友会に依頼することになります。
効果は地域によって様々で、効果が上がっているとする地域や不満を持っている地域さまざまです。契約内容もかなり違うので、一概に費用対効果を出すのも難しいですが、契約にて捕獲頭数を担保していなかったり、使用する銃器の種類が決められていなかったり(肉を有効活用する際に問題)します。
とても少ない事例ですが、最近では、企業やNPOがハンター集団を持ち、効率的なハンティングを行っている事例も少しづつできていますが。。。
地域の生き物を長期的・永続的に保護するための生息数の調整として捕獲する。ちょっと分かりにくいですが、目的が、駆除に比べて広く、農林水産業に対する被害削減だけではなく、どれくらいの生き物がそこにいることがふさわしいのか?という科学的な知見に基づいて、増えすぎた生き物の数を調整しようという考え方です。
駆除と個体数調整が混同するのは、1.個体数調整の実現手段の一つに、駆除もあることと、2.野生動物の移動距離が長く、個体数が爆発的に増えているので、悪影響を起こす個体とそうではない個体の区別がつかず、どの個体を捕獲しても『駆除』とみなしているからですね。
いつか、個体数調整の実力を持った、野生動物の専門家でありハンターでもある専門家集団を作りたいです。
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