『魚を食べる』を考える。シーフードプリント ナショナルジオグラフィック2010年10月号から

シーフードプリントという概念で、我々が魚を獲ることと海の生態系に与えるインパクトを数値化し、過去から現状、未来へ海がどうなっているかを考えます。シーフードプリントによって、『過剰な漁獲』や『裕福な国による寡占』が浮き彫りにされます。

海からどれだけの魚介類を獲っているかを知るには、一般的には『漁獲高』を用います。漁獲高は単純に、どれだけの重さの魚介類を獲ったか?を示す数字です。
では、海の生態系に与えるインパクトは、マグロ1kgとイワシ1kgで同じでしょうか?

マグロは、サバなどの魚を大量に、約10日で自分の体重と同じ量の魚を食べます。食物連鎖を考えると、同じ漁獲高のマグロとイワシを比べると、マグロは100倍もの影響を海の生態系に与えることがわかります。

シーフードプリントの考え方は、海の生き物を食物連鎖の順番に4つに分けて考えます。
上位の捕食者(マグロ、サケ)
中位の捕食者(サバ、ニシン、タラ)
一次消費者(イワシ)
一次生産者(プランクトン、藻)
で、それぞれの階層の生き物たちが生きていくのに必要な一次生産者の量が、シーフードプリントになります。

我々が海の資源をどれだけ消費しているかを計測するには、漁獲高ではなく、別の統一した基準で測る必要があり、そのひとつとして、シーフードプリントが考えられる。ということです。

漁獲高も過去50年で4倍以上に増加していて、さらに技術向上で、単位重量あたりのシーフードプリントが高いマグロやサケを効率的に獲れるようになりました。
つまり、漁獲高の増加以上に、海の生態系に与える影響は大きくなってしまっています。
このままでは、未来にわたって、海の幸を美味しくいただくのは、持続可能ではない。という結論になります。

ナショナルジオグラフィック誌は、その解決方法の提示までは具体的に示していません。

考えられるのは、マグロやサケなどの上位捕食者の代わりに、イワシなどの一次消費者を我々が食べることしかないように思います。もちろん、
最近話題の完全養殖マグロなども、餌としてサバやアジなどを与えていることから、シーフードプリントで考えると、実は持続可能ではありません。『イワシを人が食べること。』これが重要なんでしょう。

また、少し前に議論になった『クロマグロの禁輸』に反対する方々の意見は、
『マグロの資源量は減っていない。もしくはコントロールできる。』でした。
これは、シーフードプリントの考え方からすると、マグロを獲ることは、イワシなどの一次消費者を獲ることと比較し、100倍の影響を海の生態系に与えるが、大丈夫なのかどうか?という議論を行う必要があります。

つい、マグロという特定の種に注目して、それが減っている/減っていない(=獲っちゃだめ/獲っていい)という議論になってしまいますが、シーフードフットプリントのように、全体をわかりやすく見せて議論を行わないと、生態系保全を考えるベースにもならないということかと感じます。

 

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