獣が山から下りてきた本当の理由
前回のブログで、『山が荒れたから、獣が里に下りてきた』は間違いで、『里が変わったから、獣が山から下りてきた』 と書きました。
人間が里山の管理ができなくなったため、里山の機能の一つである『人間と野生動物の緩衝帯』も機能しなくなり、獣が里に入りたい放題。。。となったわけですね。
ところが、里山の管理ができなくなるのと、山から獣が下りてくるのは同じ時期に起きたわけではありません。
最も重要な里山の機能に薪炭材生産がありますが、日本国内で需要のあるエネルギーが薪炭材から石炭石油ガスといったエネルギーに変わったことで、薪炭材生産はほとんどの地域で行われなくなっています。
これは、1900年ごろの話です。一方、山から獣が下りてきたのは、1980年頃から。80年ものタイムラグがあるわけです。
いったいこれはなぜでしょう?
結論は実は簡単で、山が豊かになり、山の獣が増え、山のキャパシティーを超え始めたのが1980年代だったからです。
日本の森は、昔からとても豊かだった。。。と考えている方は多いと思いますが、里に近い山はかなり荒れてたんですよね。
昔の画家が書いた京都近郊の絵です。木がちょっとしか生えてません。
江戸時代の江戸や大阪といった大都市のエネルギー源としての森林や、明治に入った後の国内人口の急拡大や、昭和の戦後復興などで木材需要が高くなったことなどで、森林はどんどん切られていきました。
同時に、野生動物の生息環境も悪化し、生息数が激減したのが、この時代です。
ついでに、明治時代には、外貨獲得のためにシカ皮や肉を大量に輸出していたということもあります。
その後、幸か不幸か国産の木材需要が低くなり、森林に手を入れることがあまりなくなった近年、日本の森林は急速に回復し、同時に野生動物の数も急拡大した・・・というわけです。
さて、まとめると
『山が荒れたから、獣が里に下りてきた』は間違いで、
『山が豊かになって、獣が増えた。さらに、里が変わって、獣を防ぐ能力が弱くなっている。だから、獣が里に下りてきた。』
これが、正解であると考えています。
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